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  • たずねびと:この顔に、ピンと来たら唄ってもらえ!

    February 1st, 2010 by Lil Akim

    忘れもしない、あれは2004年のことだ。

    その頃のわたしは、自宅にいる土曜日の夜はNBCの”Saturday Night Live”を見るのがお決まりだった。

    その夜もいつものとおりSNLを見て、チャンネルはそのまま、続いて放送される”Showtime at the Apollo”をぼーっと見ていた。

    ご存知のとおり、”Showtime at the Apollo”はハーレムのアポロ・シアターで毎週水曜日に開催されるアマチュア・ナイトを録画放送したものだ。

    平たく言うと「素人のど自慢大会」なのだが、これがどうして、なかなかの芸達者が出場する。それに加えて、出場者の出来、不出来に観客がシビアに反応するもんだから、見ていて面白い。

    素晴らしいと観客が判断した出場者は拍手喝采をもらい、良くないと判断されるとブーイングの嵐が吹きすさぶ。

    テレビの前に座っているわたしもシビアさでは負けていない。
    出場者の芸がそれほどでもなければ、その時点で容赦なくチャンネルを回すのだから。

    さて、問題のその夜はなかなかの芸達者揃いだった。
    テレビのリモコンに手をのばすこともなく、番組の半分以上は見ただろうと言う頃、黒人男性のグループが上手い歌を披露し終わり、拍手を浴びて舞台の袖に引っ込んで行った。

    司会のモニーク(そう、つい最近ゴールデングローブ賞を受賞した、あのモニークだ)が次の出場者を紹介する。

    黒人男性グループに送る拍手が続くせいで、名前がよく聞き取れない。
    でも別に名前なんて聞く必要はない。だろう?

    と、舞台袖から少なくとも1週間はシャワーを浴びてないと思われる、まるでホームレスのようなおっさんが現れた。

    肩まである薄い髪はべっとりと頭にはりつき、牛乳の瓶の底のような眼鏡はツルの部分が壊れている。着ているダウンジャケットもなんだか臭いそうで、肩からドでかいラジカセをぶらさげている。

    シビアな観客達は、そのおっさんの姿を見るなり一斉にブーイングを始めた。
    おもしろがってはやし立てる観客もいる。
    わたしの手もリモコンにのびる。

    するとおっさんがラジカセを肩から下ろして舞台上に置く。

    まるでそれが合図だったかのように、マーヴィン・ゲイの「レッツ・ゲット・イット・オン」のイントロをバンドがポワン、ポワン、ポワンと演奏し始めた。

    おっさんは女性を押し倒すようにスタンドマイクを傾け、唄いはじめる。

    な、なんということだ!
    マーヴィン・ゲイも墓場の中で飛び上がるほどの、そのソウルフルな唄いっぷり!

    アポロ・シアター中の観客はぶちのめされて大絶賛スタンディング・オベーション祭り。

    テレビの前のわたしもリモコンにのばした手をひっこめ、ソファーからずり落ちそうになる。

    それほどおっさんの歌声は衝撃的だったのだ。

    以来、時折「あのおっさんはどうしているのだろう。もう一度あの日の放送を見たいなー」と考えたもんだが、インターネットで検索しようにも名前の切れ端すら記憶にひっかかっていない。

    時折おっさんの臭そうな姿を思い出しては、ため息をつくしかなかったのだ。

    そんなある日、全く関係のないYou Tube動画を見終わったわたしは、「関連動画」として紹介される小さいサムネイルの中に、なんだか見覚えのあるホームレスチックな姿を発見した。

    「も、もしや?」

    間違いない。
    それはあの日のおっさんの動画だったのだ。

    いや、百聞は一見にしかず。
    なぜわたしが5年以上も恋いこがれていたか、どうぞご覧あれ!


    このおっさんの名はブラッド・プラウリー。
    現在はスーパー・バッド・ブラッド(Super Bad Brad)と呼ばれていて、ググるとwikiのページまであるのがわかる。

    カラオケマンと呼ばれていた時期もあり、2003年にはアドルフォ・ダーリン(Adolfo Doring)がそのタイトルでショート・ドキュメンタリーを撮影したんだそうだ。



    カラオケマンのドキュメンタリー映画


    10歳の時にNYに移り住み、ソウル・ミュージックが大好きで、ドキュメンタリー映画撮影時の2003年で、すでにグリニッジ・ヴィレッジでの街角シンガー暦12年の地元ではかなりの有名人という。

    残念ながら、ニューヨークが誇るカラオケマンことスーパー・バッド・ブラッドは現在はマンハッタンで営業していないようだが、You Tubeに上げられている動画から判断するに、2009年の10月にはボストンで唄っていたようだ。

    となるとひょっとしたら、もうすぐ古巣のNYに戻ってくるかもしれない。

    てことで、この顔に、ピンと来たら是非唄ってもらえ!

    “You’ll Never Find”


    “What You See Is What You Get”


    “For the Love of Money” in Boston

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