No.9 チームメイトが解雇に
September 6th, 2010 by Sally
先月、二週間半の日本滞在を終えて職場に戻ると、チームメイトの女性Tがいなかった。彼女は私が不在の間、なんと解雇されていた。
私は月曜に出社したのだが、その直前の金曜日まで、仕事の件はもちろん「お土産買っていくよ~」なんて日本からTにメールしていた。でもTはその週末に解雇の通告を受けたのだった。
アメリカでは、解雇を知らせたら即刻職場から出て行かせる。職場に残る時間的猶予を与えると、その人が会社のデータを盗んだり、逆上してPCや備品を壊していく可能性があるからだ。
もっとも、会社が心配しなくとも、解雇された方はやりかけの仕事があろうがもう関係ないし、同僚と顔を合わせたくもないから、すぐにその場を立ち去りたいだろう。おそらく、私の会社は盗難や破壊の心配よりも、Tの心情を考慮して週末に電話で通告したと思う。
月曜にいつもどおり出社する予定だったTのデスクは、処理途中の書類が置かれたまま。PCの電源だって入りっぱなし。引き出しには私物も残っている。
「自分がこんな風に、しり切れトンボに終わることになったら―。」「毎日当たり前のように行っていた職場に突然行かないことになったら―。」私はそんなことを考えながら、切ない気持ちでTのデスクの整理をした。
でも実は、彼女の件はそう突然のことではなかった。

PHOTO : carldashjonesdotcom
あとで聞いた話だが、Tのパフォーマンスレベル(仕事の出来具合、効率)は、前々からマネージャーを満足させるものではなく、Tはこれまでにもっと正確に、効率的に仕事をするよう何度か「勧告」を受けていた。
それでも一向に改善が見られず、解雇になる数週間前、最後のチャンスとして新しい仕事が与えられた。「これが出来なければもう解雇だよ」と。
そしてその時点ですでに、もし会社を去る場合、会社から「解雇」されたとするか、「自主退職」にするかという相談もなされたようだ。
というのは、「解雇」となれば失業保険が下りるが、履歴書に記録が残ってしまい、この先仕事を得るうえで不利になる。もし履歴書に書かないとしても、前の会社を辞めた理由は必ずといっていいほど次の面接で聞かれることになる。いずれマイナス要素だ。
一方、「自主退職」なら履歴書はクリーンなままで次の仕事も得やすい。しかし、失業保険は下りない。
マネージャーに言わせると、私の会社は温情がある方だという。これまでTには何度もチャンスを与えてきたし、この先のTの経済的状況や就職を考えて相談しているし。(それもドライに考えれば、会社が不当解雇で訴えられないための防御とも言えるが。)
結局、彼女は最後のチャンスだった仕事プラス、それまでの総合評価で解雇が決まった。でも「いつ」その決定が下されるのかは知らされていなかったようで、デスクの書類も片付けることなく、突然会社へ来る必要がなくなった。私にとっては、日本へ行く前日に「しばらく会えないけど」と彼女としたハグが、結局別れのハグになってしまった。
彼女が最終的に「解雇」を選んだか「自主退職」を選んだかはわからない。人事のことだし、マネージャーたちは「もう過ぎたこと」としてTの話はほとんど出さなくなった。
私が入社してからすでに何人も解雇となっている。
それは、単なる不景気による人減らしのレイオフではなく、会社の求めるレベルの仕事をしていない、という理由が多かった。私はそのたびに厳しさを感じていたが、今回は初めて同じチームから解雇者が出たので、今まで以上に身が引き締まった。
たまたま私は、同じチームでもTと違う仕事をしているし、在籍期間の長かったTほどまだ期待されていないと思うが、ただでさえ言語面で劣る私は、まさに「明日は我が身」なのである。
私は学生時代、英語の理解が遅い分、他の人よりうーんと時間をかけて授業についていったものだが、職場でその手は通用しない。だってみんなと同じ時間内でできなきゃ「効率が悪い」ということだから。
焦ったり理解不足でミスしては大変だから、と、時には残業していいから落ち着いてやりたいと思うが、そこはマネージャーの目が光る。「残業になるような仕事じゃない。はい、帰って帰って!」
ボスであるCFOも私たちによく言う。「残業したり休みが取れないような仕事の仕方は自分でマネージできていない証拠!」ビジネスの世界なら当然のことだが、とにかく、決まった時間内で成果を上げることが求められる。
私が日本で働いていたときは、景気の影響をあまり受けず、組合も強い大きな会社にいた。だからパフォーマンスが悪ければ、ボーナスの査定に響くくらいで、解雇の心配をすることなんてまずなかった。
でも今は、景気がダイレクトに影響する金融系の小さな会社。解雇を気にするだけでなく、会社の存続自体、何が起こるかわからない。(現に、昨日までやりとりしていた同業者が、今日突然廃業、ということが何度かあった。)だから費用対効果のチェックがまさに日々厳しくなされている。

PHOTO : Ryan J. Wilke
ちなみにTとは連絡を取っていない。
一年半も一緒に働いたが、こんな時何と言っていいかわからないのだ。
春先に隣のチームのボスも解雇されたのだが、そのときも言葉が見つからず連絡しなかった。前の日まで冗談を言っていた仲だったのに、突然その関係を分断され、赤の他人になる―。
こういう人間関係のあり方は日本で経験しなかったから、どうにも戸惑ってしまう。情が事実についていけないのだ。それに、一緒に頑張ってきた事実がまるでなかったかのような虚しさも感じる。
しかし、去っていた同僚のことをいつまでも考えてはいられない。Tに代わる新規採用は無しで、私がTの仕事の7~8割を引き継ぐことになった。
新しい仕事を覚えられることは嬉しいが、前任者が効率よくこなせずに解雇となった仕事―。プレッシャーを感じる。
まさに明日は我が身、ベストを尽くさねば。
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