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  • No.5 死者が出ても買い物する恐怖のブラックフライデー

    December 1st, 2008 by Kay Ohara

    アメリカではサンクスギビングの夜、みんなでターキーを食べた翌日の金曜からクリスマスのショッピングシーズンが本格的に始まるので、お店の方も一人でも多くの客を呼ぼうと必死の安売り商戦を繰り広げる。先着何名様はさらに割引とか、あるいはどこよりも早い時間に店を開けようとするうちに、最近はどこもかしこも朝5時開店はあたりまえ、電化製品は半値、持ってけドロボー状態。「そんなにしてまで買い物させたいのか?」と呆れるしかない。

    ニューヨーク・メーシーズの店内
    Photo:LarimdaME


    そんな中、ロングアイランドのヴァリーストリームという町にあるウォルマートで、開店時になだれ込んだ客が制止しようとした店員をかまわずみんなで踏みつけ、死亡させるという事件が起こった。

    私は昔ロングアイランドに住んでいたので、今でも町の名前を聞けば、そこの各人種の割合とか、平均的なマイホーム価格とか、そこにどんな人たちが住んでいるか、すぐにピンとくるぐらいの知識がある。ロングアイランドと聞いてハンプトンみたいなお金持ちの別荘地を思い浮かべていたら大間違い。

    ヴァリーストリームと聞いて、あの町のモールに出没する人たちは、ほとんど黒人、白人はいても最下層のレッドネック系がチョロチョロ、とりあえず車がないと生活が成り立たないので、移民の人も少ない、スラムよりちょい上、という町の風景が思い浮かんだ。あのウォルマートに並んでいた人たちも、ぶっちゃけ、その半分ぐらいはフードスタンプという低所得者層用の食品配給券をもらい、女性の3人に1人は生活保護を受けているシングルマザー、男性の4人に1人ぐらいは窃盗などの軽犯罪で服役したことがあるような人たちでしょうな。

    そんな低所得、低学歴、低能な人たちでも、50インチのプラズマテレビが800ドル!なんて広告につられて、普段はしないような早起きしてまで買いにいくんだ、と思うと暗澹たる気持ちになる。テレビ買う金があったら子供にもっと栄養のある物食べさせてやれるだろう、あるいはくだらんテレビなんて見ない方がマシ、5時起きできるぐらいならちゃんと遅刻せずに真面目に仕事できるだろう、と思うけど。

    何しろ、この国では戦争が起こるとなると、政府が「欲しがりません、勝つまでは」というプロパガンダの代わりに大統領が「経済効果のためにもっとショッピングしろ」とけしかけ、不況になると政府がお小遣いをくれてさらに買い物しろとやるのが経済政策。

    ブラックフライデーのショッピングモール
    Photo:Ted Knudsen



    ま、貧乏人ですらここまで物欲に取り憑かれている国ですからね、金持ちともなったらその執着はひたすらもっとすごいわけで。神戸牛のハンバーガーとか、ダイヤをちりばめた携帯電話とか、自家用バスケットコートに、SUVのストレッチリムジン…最悪の成金趣味の権化がBlingというわけ。

    住宅の値段が上がっていたのをいいことに、世界を金融不安に陥れるまで、アメリカ人は買いに買いまくって、さらに持ち家を抵当に入れ直して借りてまで買いまくって、会社がつぶれそうになってもまだ政府にお金もらって自分たちのボーナスにしようってんだから、恐れ入る。

    しかも、渡米したときに日本の人も「おかしいな?」って思うだろうけど、現金払いの明朗会計、人にお金なんて借りたことありません、というお金に真面目な人がクレジットカード作れなくて、車のローンに住宅ローン、他にもカード作って借金まみれの人の方がすんなりプラチナカードだの、上限グレードアップだのと優遇される。

    今年亡くなった大好きだったコメディアン、ジョージ・カーリンのジョークが身にしみるぜ。

    「アメリカの国技と言えば、野球じゃないね。ショッピングだよ。物を買うのがこの国の最後の特技」
    「ありもしない金で、要らない物を買っているんだ」
    「クレジットカードの上限まで、家に着く頃には欲しくなくなるような安物を買って、一生それに18%もの利子を支払うんだ、バカだよな」


    一方で、最近うちの近所で時々見かけるReverend Billy and the Church of Stop Shopping(ビリー神父と買い物しない教会)という団体があって、ユニオンスクエアで説法や厄払いをしている。信者(?)の頭に手を当てて「借金よ、去れ!」「買い物などやめるのだ!やめられる!やめる!」と本気でエクソシズムやってる。懺悔の代わりにクレジットカードを差し出すと、それをちょん切ってくれるサービスもあるし。

    バカらしくて笑っちゃうんだけど、根っこの主張は真面目で賛成できるので、密かに応援している。

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