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  • 同級生は異邦人 No.15 シエラレオネから来た19歳・アリーとの友情

    January 5th, 2009 by Sally

    ブルックリンにある今の大学で3つの学期を過ごし、この冬卒業する私。大学では授業によってクラスメイトの顔ぶれが違うが、3つの学期とも何かのクラスで必ず一緒だったのがアリーだ。

    アリーは19歳のアフリカン・アメリカン。私から見たらまだ少年である。彼は5年くらい前にアフリカのシエラレオネからニューヨークにやってきた。

    彼とは最初、数学のクラスで一緒になった。彼は数学が大得意、そして私は日本での教育のおかげで、いつも揃って成績トップ。だから「ぬ、お主、やるな。」という感じで自然と話すようになった。

    across_15


    ニューヨークでは、海外から移住してきた人と会う機会は多い。そういうときにいつも聞くのと同じように「どこから来たの?」から始まって、母国や家族のことをアリーに尋ねた。

    でも、アリーは、自分がシエラレオネから来たこと、親はもともと隣国のギニアに住んでいたことを話しただけで、あとは何も語らなかった。仲良くなった後も、話が母国の方に向くと、急に黙ってしまった。

    シエラレオネというと、内戦や少年兵のイメージが強い。イメージだけで判断するのはいけないけれど、アリーが黙ってしまうのはもしかしたらそれに関係しているかもしれない。私はそれ以上アリーに国や家族のことを聞くのをやめた。

    実際、そのことを知る必要もなかった。会えばいつも授業の話ばかり。アリーは数学だけはすっごく力を入れているのだ。夜中に突然、「How are you?」の挨拶もなしに、いきなり「Question No.XXだけどさあ、」と電話がかかってくることも時々あった。

    まだ19歳のアリーは、問題を早く終わらせたいのと、知識があるという自信で、がーっと問題を解く。が、突っ走るあまり、使う公式を間違えていたり、引っ掛け問題にまんまと引っ掛かっていたりする。

    一方、彼の倍くらいの人生を生きている私は、慎重に問題に取り組むが、その分すごーく時間がかかる。頭がカタイのか、変わった応用問題が出ると、どうやって解くかアイデアが浮かばない。

    そう、私たちは問題を解くとき、まさに正反対の特徴があった。だからこそ、宿題の答え合わせをすると、お互いのミスがわかってフォローし合えた。

    学校には、留学生や移民向けに学業のヘルプをしてくれるサポートセンターがあるが、私たちはそこでよく一緒に勉強をした。アリーが一番流暢に使える言語はフランス語。アメリカの高校を出たとはいえ、英語の読み書きとなるとまだ問題があった。私も英語は学習途上なので、そういう意味でもアリーとは同志だった。

    その後マーケティングでも同じクラスになって、グループプロジェクトも一緒にやった。彼は面白いアイデアをポンポン出して、私がそれを企画書としてまとめた。ここでも私たちは役割をうまく分担できたのだ。

    そして、私にとって最後の学期に、またアリーと数学のクラスで一緒になった。アリーは頭の中にいっぱい公式が詰まっているものだから、黒板で問題を解くときに不必要に難しい公式を使って、かえって間違える。私は後ろから小声で「違ってるよ!」と指摘する役になった。

    また、難しい課題が出たときは、みんなの前では「こんなの簡単さ」と言うくせに、あとでこっそり私のところに、「これって、この公式でいいんだよね?」と念を押しにくるところなんかは、やっぱり19歳らしかった。

    学期も終わりに近づいたある日のこと。

    私はまだSophomore(大学2年生)のアリーに、「私はもう卒業だから、残りの学業頑張ってね」と言ったら、珍しく授業以外のことを話してくれた。

    「俺は卒業したらドバイで働くんだ。」

    アリーの父親は一緒にニューヨークに移住してきたものの、インターナショナルな仕事であちこち飛び回っているので、ほとんど一緒に過ごしていないと言う。

    今は従兄弟と妹と一緒にブルックリンに住んでいるけど(ということは母親も不在)、彼がアメリカにとらわれる理由はなく、むしろムスリムのアリーは、イスラムの国に住みたいという気持ちがある。

    それに、彼はフランス語と同じくらいアラビア語もできる。それで、ドバイにいる知人から、語学力を生かしたビジネスのオファーがあるらしい。バブルがはじけた感のあるドバイだけど、三ヶ国語を話せればチャンスはいくらでもあるだろう。

    その数週間後、私たちは期末テストを終えた。テストの後、お互いの答え合わせをしたら全部一致していたので安心したけれど、もう、アリーと一緒に勉強をすることもないと思うと淋しい気持ちになった。

    「いつかまた会おうね」と、最後はウルウルしながらハグして別れた。

    別れはいつでも悲しいけど、でも自分がもしここに留学しなかったら、こんな風にアフリカから来た少年と出会って、経験を共有し、そして友情を結ぶことなんてできなかっただろう。

    年代も国境も文化も超えた友情。私のニューヨークでの体験にまた輝きが増した。

    アリーの国・シエラレオネ共和国(Republic of Sierra Leone)
    アフリカ西部、大西洋に面した人口約580万人の国。首都フリータウン。公用語は英語、人口の約60%はイスラム教徒。かつてイギリスの植民地であったが、1961年にイギリス連邦の一員として独立、1971年には共和国となる。ダイアモンドの産出地として名高いが、1991〜2002年、ダイアモンド鉱山の支配権をめぐり政府軍と革命統一戦線(RUF)の間で大規模な内戦が起こる。現在は平和維持プロセスの途上。日本とは民間の漁業協定がある。
    ( データ:外務省HPより)


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