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  • No.8 小さくなったアメリカンドリーム

    April 23rd, 2007 by Arisa Suda

    一昔前、日本人がアメリカへ、それもニューヨークへ渡ると言ったら、それはそれはものすごい挑戦で、一世一代を賭けた大冒険!だった、はず。 親戚一同が成田空港まで見送りに来たりして、田舎のおばあちゃんは「敗戦の恨みを晴らして来い、成功するまで戻ってくるな」と涙を浮かべ、飛び立つ飛行機を見送りながら日本の国旗を振ったかもしれない。

    ま、そこまで極端ではなくても、たかがほんの10年、20年前でも、今とは違うレベルの決意が必要だったに違いないわ。だから、あたしよりもずっと前に渡米して活躍してるニッチの先輩方はすごいなぁ、と心から尊敬するわ。

    運良く、多少の貯金さえあればひょっこり海外に行けちゃう時代に生まれたあたしは、一旗揚げて見せるわ!とか、故郷に錦を!とかそんなたいそうな決意もなく、熱血リーマン生活で勝手に貯まった貯金を手にぴょーんとニューヨークへ渡った。英語力すらゼロの状態で。

    でもなぜニューヨーク? チョー寒いのに!!!

    今となっては暖かいLAも悪くなかったなとも思うけど、当時たまたま知り合いに言われたひと言にあっさり納得し行き先はニューヨークと即座に決めてしまった。

    「キミみたいなタイプは、LAに行ったら後悔するかも知れないけど、ニューヨークに行ったら後悔することはないと思うよ」

    なるほどそうか、じゃニューヨークに行く。(単純)

    とサクっと決めちゃったけど、今考えると東京以外の都市ならどこでも良かったのかもしれない。おバカなあたしに「キミはメキシコシティに向いてるね」と助言する人がいなくてよかったわ。(それはそれで別の人生が開けてたかもしれないが)

    こんな調子で、たいした前調べもせずバタバタと東京を引き払いとりあえず来てみたものの、なーんにも知らずに突然一人でニューヨークに渡り生活を始めるというのは想像以上に大変なことだった。ってか当然か。

    タイムズスクエアってどのビルのこと?(恥)

    え?マンハッタンって島だったの?(死)

    無知にもほどがある。恥ずかし過ぎて抹殺したエピソードは100万個くらい。そのくらいあたしは自分の可視圏内に入るもの以外には全く興味がなかった。英会話に行く人はバカ。そんなヒマがあったらもっと残業するかビジネス書でも読んだ方がいいと本気で思ってたので、英語力も相当ひどいもの。

    「ヘーイ、ワッツアップ?」

    「え?なにがアップしたの?」(アホ)

    今考えればこんな状態でよく3年もニューヨークで生き延びたものだ。人間の適応能力というのはすごいかもしれない。(違)

    その後、前のコラムにも書いたけど語学学校から1年間のインターン生活を経て、めでたく就職。さらに転職してようやく普通のサラリーマンとなることができた。語学学校時代は、新聞を小脇に抱えてハイヒールを鳴らしながらオフィスビルに入っていくキャリアウーマンを指くわえてみていたわけで、とりあえずあたしのニューヨークで自立するという小さな夢は現実のものとなった。

    ま、要は東京でやってたことがやっとニューヨークでもできるようになったというだけ。
    でもそれまでの苦労を考えるとそれだけでも万々歳だ。これでもう貧乏じゃないフリをしなくてもいいのね。ヤッタ~!!

    ある日、無事保険も整ったので歯医者さんに行った。ここのドクターはニューヨークに来た当時たまたまヤンキース戦で会ってお話をしたことがある。久しぶりだね~、あれからどうしてたの?と聞かれるがままにビザステータスや就職の話をしていたら、

    「キミ、それはアメリカンドリームだよ!1年ちょっとで労働ビザだなんてすごいことだよ!」

    とドクターが興奮する。

    え?そうなんですか?そんなすごいことなんですか?(驚)

    嬉しくなって日本から撮影に来ていた友達に、あたしったらアメリカンドリームをモノにしたらしいわ~と自慢したら、

    「アメリカンドリームもずいぶんちっちゃくなったもんだぁね、ケッ」

    とざっくり斬られた。

    あいたたた…た、確かに。昔だったらブロードウェイデビューとか、金融長者になるとかそういうレベルがアメリカンドリームよねぇ。セントラルパークウエストにビルの1個くらい買ってみろよって感じよね。ずいぶん小さくまとまったわ、あたし。しょぼん…。

    でもね、痩せても枯れてもここはニューヨーク。この世界中から超人や変人が集まった欲望と野望の島マンハッタンで、たいした才能もないのに自立できたという自信はこれからの人生にちょっとは役に立ちそうよ。

    東京で伸び悩んでるあなた。東京の次のステージが見つからないあなた。ちょっとだけ働きづめの自分にお休みをあげてニューヨーク新たな可能性を試してみるってのはいかがでしょう?今の時代、こーんなお気軽留学だって可能なんだから。

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