• Home » Archive by category 'かぶりつき!ブロードウェイ観劇レポート'
  • メールで購読出来ます

    Site search

    Subscribe

    NY Niche Mobile

    QRcode

    Archives

  • Associates

    ex-NY Niche.com

    Writer's Blog

    Writer's Official Site

    Contact

  • Categories

    • MET
    • NY Maritime Hotel in Meatpacking district
    • NY restaurant / Pastis in Meatpacking district
    • Gucci flagship boutique at 5th Avenue
    • Rockefeller Center 2007
    • Lincoln center 2007
    • Brooklyn bridge
    • Heavy Snow : Feb. 2006
    • Brooklyn Museum
  • Recent Comments

  • Highest Rated

  • Archive for the ‘かぶりつき!ブロードウェイ観劇レポート’ Category

    No.16 思わず腰ふる、エネルギー爆発ミュージカル『Fela!』

    May 5th, 2010 by Lil Akim

    ブロードウェイのショウが定刻通りに始まることなどめったにないと承知しているわたしは、いつも開演予定時間の約5分前に劇場に到着する。

    しかし、その日はいつもよりも遅く、アフロビートの創始者で政治活動家のフェラ・クティの半生を描いたミュージカル『Fela!』を上演している劇場にたどりついたのは、開演時間ぎりぎりだった。

    万が一にそなえ早足で歩いたために切れた息を整えつつ扉をくぐる。
    その途端、観客達の話し声と劇場中に溢れるビートの効いた音楽、色彩豊かな照明とアートの洪水に飲み込まれた。

    舞台上では既にバンドが演奏している。
    客席のノリやバンドメンバーの汗から判断すると、演奏は随分前に始まったようだ。

    顔にアートペインティングをほどこした数人の女性ダンサーも、リズムに合わせて腰をくねらせている。

    ダンサー達が身につけているのは、プリミティブなプリントの布を使った腰ミノのようなミニスカートや、レザーのボンデージ風ベルトでアクセントをつけたイカした衣装。
    腰の動きに合わせて布やベルトが揺れ、カラフルな照明がその揺れを彩っている。

    照明が照らし出すのは他にもある。
    ダンサーの背後に見えるトタン板が貼りめぐらされた殺風景な壁と足場。それを縁取るコードと電球。

    そして、そんな武骨なセットとは対照的に、舞台と客席とを隔てる見えない第四の壁を超えて客席にまで広がる大胆なアート。

    舞台からセットがはみ出して客席に進出する美術は何度も見たことがあるが、これは今までに見たどれとも違う。客席も舞台の一部であるかのような不思議な一体感と奥行きが感じられ、ブロードウェイの劇場にいることを忘れさせるのだ。


    PHOTO: gbSk


    既に自分の席に落ち着いていた5、6人の観客を立ち上がらせ、オーケストラ席のド真ん中という最上席に腰を下ろしたわたしがあたりを見回すと、ご近所さんのほとんどがパラソルの乗っかったのやら乗っかってないのやらの飲み物を手にしている。

    隣の席に座っていたキュートなお姉ちゃんは、腕時計に落とした視線を劇場後方につと移したと思ったら、決然と立ち上がって長い脚で座席の背もたれをまたぎ、通路に着地するや否やバーに走り出す。

    不思議に思いながらプレイビルを開いたわたしがそこに見つけたのは、ブロードウェイの劇場では見たことがない文章が書かれた蛍光色の紙っぺら。

    「バー営業中! 二幕目の始まりまで開いてます!」
    「ショウをご覧の間、どうぞお席でお飲みください!」

    なんと、酒を飲みながら観劇できる。
    どうりで客席がいつものブロードウェイの劇場らしからぬ雰囲気を持っているはず。
    アルコールのせいだったのだ。

    しかし、わたしのこの短絡で浅はかな憶測は、ミュージカル『Fela!』が始まってほんの数分で間違いであることが明らかになる。

    アルコールが血管の中を走ると気分が高揚するがごとく、劇場を包み込むアフロビートのリズムは毛穴からじんわりと体内にしみ込み、心臓に到達する。

    そして、ズンズンズンというリズムとドクンドクンドクンというビートがひとつになり、自分の身体の中でアフロビートが鳴り響く。

    アルコールのせいではない。
    音楽のせいだ。

    いやはや、これで酒でも入っていようもんなら、自分がブロードウェイの劇場にいるのではなくクラブにいると思い込んで踊りまくっていたことだろう。

    しかし、それこそジム・ルイスとともにこのミュージカルを書き、振り付けと演出を担当した世界的な振付家、ビル・T・ジョーンズの狙いだったのである。

    その証拠は舞台の上にでかでかとかかげられていた。

    「SHRINE(聖堂)」

    フェラ・クティが、ナイジェリアのラゴスに作ったナイトクラブの名前。


    フェラ・クティを演じるサ・ンガウジャ
    (C) Monique Carboni


    ロンドンの大学で音楽を学び、マイルス・デイヴィスやジェームス・ブラウン、フランク・シナトラ(!)に影響を受けたフェラの音楽は、都会的な臭いとアフリカの臭いが混ざり合い、ジャジーでファンキー。
    ジャンベとブラスとエレキギターが奏でる曲はゴキゲンだ。

    自身のバンドのツアーで滞在したアメリカでブラックパンサー党やマルコムXの思想に影響を受けて以来、歌詞には黒人の解放やパン・アフリカニズム等の政治的なメッセージが込められるようになり、時折はさまるコール&リスポンスによって、彼のメッセージはゴスペルのように聴衆の耳の奥まで届く。

    軍隊をゾンビと表現した代表作「Zombie」等、ナイジェリアの軍事政権の圧政や富裕層を批判する作品を発表するフェラは、西アフリカ地方随一の大スターとなったが、当然ながら当局にとっては巨大な目の上のたんこぶ。

    政府からの妨害を受け続け、不当逮捕、投獄、釈放を繰り返し、ついに作ったのが有刺鉄線で囲んだ「カラクタ共和国」と呼ぶコミューンだ(決して「ガラクタ」ではない)。
    そしてその中に作ったナイトクラブが、彼の活動の拠点となるShrine。

    ミュージカルは、1978年の夏、世界的にも有名な女性解放運動家で「アフリカの母」とも呼ばれるフェラの母、フンミラヨ・アニクラポ・クティの死の半年後に行なわれた、Shrineでの最後のコンサートという設定だ。

    そう。つまりはブロードウェイの劇場はフェラのナイトクラブで、観客はナイジェリア政府当局の包囲をかいくぐってカラクタ共和国の有刺鉄線を超え、命がけでShrineでのライブを聞きに集まった客達というわけだ。

    そんなこととはつゆ知らず、フェラ・クティの半生を、フェラ・クティ自身の音楽に乗せて描いたミュージカル、すなわち『ジャージー・ボーイズ』のようなジュークボックス・ミュージカルを予想して劇場にやってきたわたしは、ものの見事に裏切られた。

    ミュージカルが始まってほんの数分で、2009年のブロードウェイから時空間を超えて1978年のナイジェリアにポンと放り込まれたのである。

    その時空間の旅を助けるのは、尊大な態度と色気とカリスマを持ってフェラを演じる俳優だ(サ・ンガウジャとケビン・マンボのダブルキャスト)。

    刺繍があしらわれたピンクやブルーのベルボトムパンツをセクシーに着こなし、腹のシックスパックを見せびらかし、見事な口パクでバリトンサックスを吹き(正確には吹いているように見せ)、聴衆を魅了しながら劇場中の観客をコンサートの一部にしてしまう。


    フェラ・クティを演じるケビン・マンボ
    (C) Monique Carboni


    そして、『Spring Awakening(春のめざめ)』でトニー賞を受賞したビル・T・ジョーンズが振り付けた、ダンサー達を次から次へと病院送りにするほど過酷なダンスを、ショウが始まる前から終わるまでたっぷり、週に8回も披露してみせるアンサンブル達の底力にも目を見張る。

    また、たとえダンサーでなくとも、音を聞いたら自然に腰を振ってしまう音楽を提供するのは、アレンジと演奏も担当するアンティバラス・アフロビート・オーケストラ(Antibalas Afrobeat Orchestra)。

    ブルックリンを拠点に世界的に活動し、実際にフェラ・クティのバンドメンバーだったミュージシャン達も認めるこのバンドのアフロビートを聞くと、自分がブロードウェイの劇場に居ることをすっかり忘れてしまう。

    そして、実際のShrineを知る人にまで「まるで本当のShrineに居るようだ」と言わしめたセットと舞台美術。
    さらに、そのShrineを時にポップに、時に荘厳に見せる美しい照明の力と、効果的にトタン板に映し出される映像の力も大きい。

    この作品を「偉大なミュージシャンであり活動家であるフェラの半生を描いたミュージカル」と単に呼ぶことは難しい。

    これは、今を生きる現代人に今は亡きフェラを体験させるために作られた、今までのブロードウェイ・ミュージカルの枠を超えた全く新しいミュージカルだ。

    全てが渾然一体となってよりパワフルなエネルギーを生み出しているこの作品を観た後、わたしに口にできるのはただひとつ。

    フェラのコールに応えたリスポンス、「Yeah Yeah!」だ。


    勝手に腰が動く度:★★★★★
    「すごいものを見たぞ」度:★★★★★
    フェラ・クティのことが良くわかる度:★★
    フェラ・クティのことをもっと知りたくなる度:★★★★★
    チケットに払っても良い金額:$122(フルプライス)


    <オマケ1>
    この作品は、2008年9月にオフ・ブロードウェイで1ヶ月だけ上演されて大絶賛を受け、1年後の2009年11月にブロードウェイに移ってきたものだ。今年の11月からはロンドンでの上演も決定しており、ブロードウェイに引き続き、サ・ンガウジャとケビン・マンボの二人がフェラを演じる予定。

    <オマケ2>
    フェラの半生を描いた映画がもうすぐ作られる予定。これも楽しみだ。

    <オマケ3>
    5月4日に2010年のトニー賞候補がアナウンスされ、『Fela!』はリバイバルの『La Cage aux Folles』と並んで11の最多ノミネートを受けた。
    ノミネート部門は、作品賞、脚本賞、俳優賞(サ・ンガウジャ)、助演女優賞(リリアス・ホワイト)、美術デザイン賞、衣装デザイン賞、照明デザイン賞、音響デザイン賞、監督賞、振付賞、オーケストレーション賞で、トニー賞の発表は6月13日。


    “Fela!”
    劇場:Eugene O’Neill Theater
    230 West 49th Street (Bet. Broadway & 8th Avenue)
    オフィシャルサイト: http://www.felaonbroadway.com/

    Student Rush Ticket:有り
    学生のみ購入可能なラッシュチケットは、開演2時間前に発売開始になる。お値段は$27.00で、有効な学生証を持っている人が1枚のみ購入できる。
    但し、毎回販売されるとは限らないので、予め劇場のBox Officeで確認すべし。

    パフォーマンススケジュール(2010年5月5日現在):火 午後7時/水・木・金・土 午後8時/日 午後7時30分/土・日 午後2時
    * 水曜と日曜のパフォーマンス時間は週によって変更になる場合があるので、オフィシャルサイトでスケジュールをチェックすべし。



    FelaFelaFela!

    Knitting Factory 2010-06-08
    売り上げランキング : 216256

    Amazonで詳しく見る
    by G-Tools
     
    ZombieZombieFela Anikulapo Kuti

    Mercury 2002-01-07
    売り上げランキング : 44195

    Amazonで詳しく見る
    by G-Tools
     
    The Best of the Black President
    The Best of the Black PresidentFela Kuti

    Mega Force 2009-10-26
    売り上げランキング : 186328


    Amazonで詳しく見る
    by G-Tools

    No.15 老いも若きも中年も、ワルツを踊って相手を変える『A Little Night Music』

    April 5th, 2010 by Lil Akim

    キャサリン・ゼタ=ジョーンズほど美しくゴージャスで、お色気たっぷり、ウィットたっぷりの自信満々女でさえ、まだアヒルのオマルを使っていそうな18歳の小娘から男を取り戻すことができない世の中なんて!
    ゼタ=ジョーンズ以下の40女はいったいどうすりゃ良いというのか?

    去年の12月もそろそろ終わりにさしかかった頃、ブロードウェイでオープンしたばかりのリバイバル・ミュージカル『A Little Night Music』を見ていたわたしは、心の中で小さく悪態をついた。
    (more…)

    No.14 必見! まるで音楽の無いイタリアンオペラで「ガラスの仮面」な『A View From the Bridge』

    March 1st, 2010 by Lil Akim

    ひそかに「アメリカの北島マヤオ」と呼んでいる俳優がいる。

    去年の夏、ヒュー・ジャックマン主演の『ウルヴァリン:X-Men Zero』でウルヴァリンの兄貴を演じたあの俳優、リーヴ・シュレイバーのことだ。

    彼のことをそう呼ぶようになったのは、ブロードウェイでリバイバル上演されたデイヴィッド・マメットの『グレンギャリー・グレン・ロス』を観た2005年の夏からだ。芝居とは思えないリアルさをキャラクターに与えつつ、劇場の隅々まで到達する存在感を放つシュレイバーの力量に圧倒され、そこに北島マヤを見たのである。

    2年後に観た別の芝居『トーク・ラジオ』でもシュレイバーは期待を裏切らなかった。

    その彼が今ブロードウェイで、アーサー・ミラーの『橋からの眺め』でエディ・カルボーンを演じている。
    これを見逃す手は無い。
    (more…)

    No.13 『メンフィス』とソウルとミュージカル・シアター

    February 1st, 2010 by Lil Akim

    しっかりした物語にノリの良い音楽とダンス。
    唄って踊れて演技ができる俳優陣に、時代とキャラクターにふさわしい衣装。
    見栄えのする舞台装置に効果的な照明。

    2009年10月にブロードウェイでオープンしたミュージカル『Memphis』には、良いミュージカルに必要なものはとりあえず全てそろっている。

    仕上がりもそつがない。

    それなのに、そこにあるべき大切なものを感じられず、作り物感がただよう。
    そこにあるべきなのにそこにない大切なものとは、いったい何ぞや?

    魂(ソウル)である。
    (more…)

    No.12 ナターシャ・リチャードソンを偲んで 「欲望という名の電車」と最後の舞台

    April 6th, 2009 by Lil Akim

    3月19日(木)の夜8時にブロードウェイの劇場街を歩いた人なら、どの劇場からもいつものきらびやかな明かりが消えているのに気づいたことだろう。

    その前日にニューヨークの病院で亡くなったトニー賞受賞女優、ナターシャ・リチャードソンの死に追悼の意を表すため、その夜、全ての劇場のビルボードからきっかり1分間、明かりが消されたのだ。

    彼女の突然の死は、数日前のスキーレッスン中の事故が原因だった。

    そして、そのニュースはわたしにはかなりの衝撃だった。 (more…)

    No.11 甘いかグロいか? ディズニーの「リトル・マーメイド」

    March 2nd, 2009 by Lil Akim

    最初に断っておくが、ワタスとディズニーアニメとはあまり相性がよくない。

    ディズニー製ブロードウェイミュージカルとはさらに相性がよくない。

    しかし、敢えて重い足を運んで批評家に不人気なミュージカル「リトル・マーメイド」を見に行ったのにはちょっとした理由がある。

    もちろん、ブランジェリーナ(注1)が子供達4人を連れて見に行ったと聞いてご一行様見たさにミーハー根性で忍び込んだのでもなければ、ブロードウェイの劇場に子供料金など存在しない(注2)ことを気にもかけない親戚のガキにせがまれたからでもない。 (more…)

    No.10 「EQUUS」で見るダニエル・ラドクリフ君の人気と実力とナニと仁王様

    December 1st, 2008 by Lil Akim

    果たして、ハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフ君はアメリカで人気があるんだろうか?

    ダニエル君のブロードウェイデビュー作「エクウス」(注1)を観た後、ワタスの頭の中はそんな疑問でいっぱいになった。

    と言うのも、ハリー・ポッター人気のおかげでチケットは早々に完売するだろうというワタスの予想は見事に外れ、tktsではほぼ毎日半額チケットが売られているし、当初は無かった学生用の格安ラッシュチケットも10月末から販売が始まったし、ボックスオフィスではなかなかの良席が割引お値段ですいすい買えちゃうし、劇場では空席がポツポツ目立つし、ハリー・ポッターファンと思しき若い観客の数も少ないのである。 (more…)

    No.9 ラティーノの人情紙芝居、「In The Heights」

    August 2nd, 2008 by Lil Akim

    「ズバリ、吉本新喜劇。」

    ブロードウェイで今一番ホットな新作ミュージカル「In The Heights」のことを、あるミュージカル通のおっさんはそうのたまった。

    そう、今年のトニー賞でベスト・ミュージカルを含む4つの賞に輝き(注1)、ラティーノの「RENT」とも言われる大人気ミュージカル「In The Heights」が吉本新喜劇なのだ。

    え? ずいぶん大胆なことを言うおっさんだなーってか?

    いやいや、このおっさんの言うことはかなり正しい。何を隠そう、このワタスも観るなり「とっても『松竹新喜劇』だぜぃ」と思ったクチなのである。 (more…)

    No.8 逃げて行った二匹目のドジョウ「ヤング・フランケンシュタイン」

    January 7th, 2008 by Lil Akim

    ブロードウェイじゃ二匹目のドジョウは釣りにくい。

    この金科玉条を教えてくれるのが、11月に鳴り物入りでオープンした「メル・ブルックスの新作ミュージカル、ヤング・フランケンシュタイン」だ。

    御丁寧且つお下品にも自分の名前をタイトルに入れてくれとるので既にお気づきだろうが、このミュージカルでドジョウを狙うのは前作「プロデューサーズ」でブロードウェイの記録を塗り替える空前の大ヒットを飛ばしたメル・ブルックス大先生。 (more…)

    No.7 轟くロック魂!「Spring Awakening(春の目覚め)」

    September 3rd, 2007 by Lil Akim

    昔、ちみがまだハナ垂れ小僧だった頃、父ちゃんと母ちゃんに「赤ちゃんってどこから来るの?」って聞いてみたことはあるか?

    ん? ワタスは無い。

    で、もしそう尋ねてみて、父ちゃん母ちゃんが「コウノトリが運んで来る」なんてスットコドッコイな答えを返してきたらどうする?

    いや、ワタスならグレるね。

    だって、日通のペリカン便も、クロネコヤマトの宅急便も、本当は人間が運んでることくらい5歳児でも知っている。なのに、赤ん坊を運ぶ謎のコウノトリ軍団を信じろだって?
    そんな無理難題を言われた日にゃ、もうグレるしかないのである。 (more…)